★教材の特徴

  国際交流基金が開発した『いろどり』は、外国人が日本での生活や仕事に必要な基礎的な日本語コミュニケーション能力を習得するための教材です。
  『いろどり』の核心理念は「コミュニケーションと文化理解」を通じて、人々の相互理解を促進することです。教材は言語知識の習得だけでなく、実際の生活場面での応用を特に重視しています。その学習目標は「JF生活日本語CanDo」基準に基づいており、学習者が買い物、仕事、社交などさまざまな日常場面に対応できるよう設計されています。
  『いろどり』の特徴:
    1. 日本での生活場面で「できること」を増やす
    2. AI~A2レベルの日本語を習得
    3. 「JF生活日本語Can-do」に基づく
    4. コミュニケーションと文化理解を通じた相互理解の促進
    5. 生活に密着した多様なトピックを網羅
    6. 豊富な音声と実用的な教材で実践的な日本語を学習
    7. 文法や漢字などの言語知識をしっかり習得
    8. ウェブサイトから自由にダウンロード可能
    9. 『まるごと』と緩やかに関連


★教材の構成

  『いろどり』シリーズは『入門(A1)』『初級1(A2)』『初級2(A2)』の3部構成です。各教材は以下の部分に分かれています。

教材(PDF) 音声ファイル(MP3) 補助教材・資料 ※
【表紙】 【第1課 - 第18課】 【解答】
【はじめに】【本教材の使い方】 【語彙リスト】
【目次】 【教師用ガイド】
【第1課 - 第18課】
練習、聴解テキスト、漢字語彙、文法ノート、日本生活のコツ
【Can-do自己評価表】
【奥付】

★教材の使い方

◇各課の構成

  『入門』『初級1』『初級2』はいずれも9つのトピック、18課で構成されています。1課あたりの授業時間は約150分~180分を想定していますが、練習量によって調整可能です。

【トピックと課のタイトル】
【ウォーミングアップ】 各課のテーマを具体的に意識させるための質問。自身の経験を振り返ったり、クラスで議論したりします。
【練習】 Can-do目標達成を目指す核心部分。1課に3~6つの練習があり、実用的な日本語を習得します。
【聴解テキスト】
【漢字語彙】 練習で登場した漢字語彙を学習。
【文法ノート】 各課で学ぶ文型や表現の解説。
【日本生活のコツ】 練習中の日本文化や事情について解説。

◇練習の種類と目標

  各課には「聞く」「話す」「読む」「書く」の4種類の練習があります。練習は独立していますが、同一課内で関連性を持たせています。練習量や順序は課によって異なりますが、全体的に「話す」練習が多めです。各練習の目標は以下の通りです。

話す 身近な状況について質問や回答ができる。
自身や身近な事柄を簡単に説明できる。
聞く 日常会話で相手の話の要点を理解できる。
簡単なニュースや放送から必要な情報を取得できる。
読む 日常生活で見かける掲示、メニュー、外国人向けパンフレットなどの情報を読み取れる。
書く 必要な書類の記入や友人へのメッセージ送信ができる。
SNSで簡単な情報を投稿できる。

◇全練習共通の学習手順

すべての練習は以下の順序で進めます:
➊ Can-do確認 その練習で習得する内容を確認。
➋ 練習 「聞く」「話す」「読む」「書く」を実践。
➌ Can-do自己評価表 教材末尾の評価表で目標達成度を自己評価。
学習者は自由に感想や今後の目標を記入可能。
練習ごとまたは課全体終了後に記入します。
🟢具体的な進め方:
1.まずCan-do目標を確認
2.語彙を予習
3.聞く/読む(会話例)
4.形式に注目 ↓空欄に語彙を入れ、文型や表現を意識。
↓文型の意味・用法を考察
↓「文法ノート」で確認
↓「文法ワークブック」で文法を定着(Can-do活動または課全体終了後の復習にも可)
5.(発話練習:) 「話す」活動では、シャドーイングやロールプレイを実施。
6.Can-doチェック 活動の感想や次への目標を自由に記入。

  『いろどり』の文法学習では、まずインプットを行い、日本語の形式と意味に注目して学習者が自ら規則を発見するプロセスが重要です。したがって、以下のような従来型の文法導入は推奨されません。

非推奨な例:

  • 文法を導入
  • 「文法ノート」で説明(授業/予習)
  • 「文法ワークブック」で練習(授業/予習)
  • 活動に移行
    • 語彙予習
    • 聞く/読む(会話例)
    • 形式に注目

  「文法ワークブック」は『いろどり』のCan-do目標達成を補助する教材です。単独で使用せず、必ず『いろどり』本体と併用してください。実際のコミュニケーション能力を養うためには、教材内の会話練習が不可欠です。

◇「話す」練習

話す
➊ Can-do確認
➋ 語彙予習 必要な語彙を学習。順序:
1. イラストを見ながら音声を聞き、意味を確認
2. 音声をまねて発音:語彙暗記ではなく発音確認が目的。
3. 音声に対応するイラストを選択:音声から即座に意味を理解する力を養う。
➌ 会話例を聞く 「話す」が最終目標ですが、まずは会話例を聞いて大意を把握。文法の詳細理解は不要。
会話例のタイプ:
会話文なしの場合
1. シチュエーションと話題を確認
2. 音声を聞き、質問に答えながら要点を理解
3. 🔲の新出語彙を確認後、再度聞いて詳細を理解
会話文ありの場合
1. 話し手とシチュエーションを確認
2. テキストを見ずに音声を聞き、質問に答えながら要点を理解
3. テキストを見ながら詳細を理解し、🔲の語彙を確認
➍ 形式に注目 Can-do達成に必要な文型・表現を学習。
1. 文型・表現に注目:会話例の空欄部分に語彙を入れ、言語形式を意識。
2. 意味・用法を考察:❕の質問を通じて学習者が自ら規則を発見。
  ➡ 「文法ノート」で確認。
3. 会話例を再聴:学んだ文型・表現の使用法を確認。
➎ 話す Can-do達成のための段階的練習。
1. モデル会話を聞く:Can-doの見本となる会話を確認。
2. シャドーイング:テキストを見ながら→見ずに反復練習。
3. 練習:「4.自由会話」の準備。語彙の置き換えやロールプレイ。
4. 自由会話:自身の状況を話したり、ロールプレイを実施。辞書やスマートフォンで調べながら進行。
➏ Can-do自己評価表

ℹ️シャドーイングとは?
  聞いた日本語を即座に影(shadow)のように追いかけて発声する練習法。全文を聞いてから繰り返すのではなく、流れに合わせて小声で発話します。

◇「聞く」練習

  学習手順は「話す」と類似していますが、最終目標は「聞いて理解できること」です。

聞く
➊ Can-do確認
➋ 語彙予習 必要に応じて語彙を学習。「話す」練習と同様の手順。
➌ 聞く Can-do達成の核心部分。
1. 設定確認:イラスト等でシチュエーションを把握。
2. 段階的理解:質問に答えながら要点を理解。「イラスト選択」「キーワード記録」「〇×チェック」など形式は様々。全てを理解する必要はありません。
3. 語彙確認後、再聴:🔲の語彙を確認し、詳細な理解を深めます。難易度の高い語彙は暗記不要です。
  ➡ 不明点は後述の聴解テキストで確認可能。
➍ 形式に注目 新出文型・表現があれば学習。「話す」練習と同様。該当しない場合もあります。
➎ Can-do自己評価表

◇「読む」練習

読む
➊ Can-do確認
➋ 読む Can-do達成の核心部分。
1. 設定確認:読む前に目的とシチュエーションを把握。
2. 段階的理解
質問に答えながら必要な情報を取得。概要→詳細の順で読み進めます。実際の日本生活ではルビなしの漢字に触れるため、教材でもルビを最小限にしています。未知の語彙は推測力を養い、後に「🔖【大切なことば】重要語彙」で確認します。
3. 内容の深化:自身の経験や母国との比較を通じて理解を深めます。クラス討論では母語使用も可。
➌ 形式に注目 文型・表現を学習。「話す」「聞く」と同様の手順。音声なしで空欄埋めを行います。該当しない場合もあります。
➍ Can-do自己評価表

◇「書く」練習

書く
➊ Can-do確認
➋ 書く 1. 設定確認:書く目的とシチュエーションを把握。
2. 例文を読む:必要に応じて前の「読む」練習の例文を参照。
3. 執筆:実際の生活を想定し、手書きまたはスマートフォン/PC入力を推奨。
4. フィードバック収集:クラスで作品を交換し、コメントを付与。読者を意識した実践的な練習です。
➌ Can-do自己評価表

◇漢字語彙

  日常生活で必要な漢字を語彙単位で学習します。目標は「漢字の意味理解」と「デジタル入力の習得」です。手書きは必須ではありませんが、希望者は自主練習可能です。
  各課では練習中の漢字語彙から約10語をピックアップ(『入門』~『初級2』で計429字)。学習手順:

➊ 読み方と意味を確認
  複数の書体で表示され、様々な字体に慣れ親しみます。
➋ 文中で読む
  漢字語彙を含む文を読み、理解度を確認。
➌ 入力練習
  スマートフォンやキーボードで漢字入力を実践。

◇文法ノート

  各課の文型・表現を解説。「形式に注目」の❕質問の回答もここに記載されています。
  形・意味・使用場面に加え、教材未掲載の用法や追加例文も紹介。活用表や類似表現の比較など、文法整理に役立つ情報を提供。
  授業では「形式に注目」の後に解説する、または学習者が自習用に使用します。文法練習専用の教材は本シリーズに含まれていないため、必要に応じて『まるごと』の「理解」教材などを補助的に使用してください。

品詞表記:
N…… 名詞
ナA…… ナ形容詞
イA…… イ形容詞
V…… 動詞
S…… 文
V-る」は辞書形(「読む」「行く」なども含む)。

◇日本生活のコツ

  日本生活に役立つ知識をコラム形式で紹介。写真やイラストを多用し、学習者が楽しく学べる構成です。
  各課の項目は練習内容に関連し、日本未経験者向けの基本情報や生活上の参考情報を掲載。練習後に自習またはクラスで共有可能です。


参考リンク


シリーズの目次に戻る